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田村を創る人たち #4

2017.06.29

「ここで生きる」と決めたから、何かやらないとつまらない。

 

田村市常葉町には、この地域に住んでいる人なら誰もが知っているやきとり屋がある。名前は、「やきとり みよし」。元々は、店主である三浦真由美さんの祖父母が始めたお店。メニューはやきとりの4種類のみ、酒は出しても2,3合、お店の営業時間は16~18時と、当初は「変わったお店」として有名だったそう。「それでも人と話すのが好きな祖父母の元には、毎日多くのお客さんが通っていた」と三浦さんは話す。

そんな祖父母を見て育った三浦さん、お店にかける思いとは、地域にかける思いとは、お話を伺った。

写真=田村市復興応援隊 渡邉

聞き手=田村市復興応援隊 渡邉 山代

文=田村市復興応援隊 山代

 

お店の前で

先代から続くお店の前で

 

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「やきとり みよし」を始めた三浦さんの祖父母


ーどんな活動をしていますか?

色々やっています。昼は家族が経営する電気工事業の「株式会社 三浦電設」で勤務。夜には「やきとり みよし」を一人で切り盛りしています。地域の活動としては、田村市でも2団体しかない女性消防団の部長を勤めています。他にも、田村市が運営する田村市ご当地グルメプロジェクトに参加して特産品の開発や提供に協力したり、地域の読み聞かせ活動にも参加しています。

田村市ご当地プロジェクトの一環で開発した八菜カレー

田村市ご当地プロジェクトの一環で開発した八菜カレー

 

ー「やきとり みよし」を始めたきっかけは何ですか?

「やきとり みよし」は祖父母が50年ほど前に始めたお店です。当時、近所に住んでいた朝鮮の方にタレのつくり方を教えてもらい、以降、それは三浦家の門外不出のタレとなりました。今ではそのタレのつくり方を知っているのは1人(三浦さん)だけです。

やきとり「みよし」のやきとり

やきとり「みよし」のやきとり

 

子どもの頃、家庭の都合もあり一時を祖父母と共に暮らしていました。家に帰って食べる焼き鳥が大好きで、特に「かしら」がお気に入りでした。そんな環境で育ったので、「やきとり みよし」は私にとってはそこにあるのが当たり前、私の「帰る場所」でした。

 

しかし平成17年に祖父が、平成19年には祖母が亡くなりました。「やきとり みよし」は閉店するか、誰かが続けるのか、何も決まらないまま休業していた時、今度は親が病気になりました。その時、突然自分の中に「何かやらなければいけない。今やらなければいけない。」そんな思いが興り、「やきとり みよし」を自分が再開することを決めました。

お客さんとのやりとりを楽しむ三浦さん

お客さんとのやりとりを楽しむ三浦さん

 

ー苦労はありましたか?

「やきとり みよし」を再開させると決めた時は、妹と2人でやるつもりでした。しかし妹の家庭の状況が変わり、1人でお店を切り盛りしなければいけなくなりました。それでもやると決めていたので、「今度の春には再開させる!」そう思っていた矢先、東日本大震災が起こり、お店の再開は延期せざるをえませんでした。

 

震災後は地域の活動で忙しく、またとてもお店を再開できるような状況ではありませんでした。それでも再開させたいという思いは消えることなく、モチベーションをさらに上げるために、平成23年には利き酒師の資格を取得しました。

 

そして平成25年、ついに「やきとり みよし」が再開。1人で背負わなきゃいけない責任は重く、お店をやるに当たっては衛生面や保健面、色々と慎重になります。でも、ようやく私の「帰る場所」が戻ってきました。

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当時を思い出しながら話す三浦さん

 

ー女性消防団の活動について教えてください。

田村市常葉町の女性消防団(正式名称:田村市消防団常葉地区隊女性部)は、平成4年に設立されました。福島県内で2番目にできた古株の団体です。今いる団員は全部で20名。そのほとんどが常葉町の町民で、平均年齢は30代前半と若い団体です。母親も多いため、活動は「家庭優先で」というルールを作り、活動しやすい環境を作っています。

 

活動内容としては、普段は緊急時のための訓練を男性団員と一緒に行っています。また、火災予防のための広報活動も行います。災害時は、けが人の手当や炊き出し、被災者のケアなど後方支援が主な仕事になります。

 

ーどういう思いで女性消防団の活動をされているのですか?

「悲惨な火災をなくしたい」そう思っています。

常時から誰がどこにいるのかを把握すること、また地域をよく知ることで、火災やその他の災害が発生した際の被害を最小限にすることができます。そのために、今年の6月からは1人暮らしの方を訪問する活動も始めました。

 

東日本大震災が起こった時、当初は大熊町などから常葉町へ多くの避難者がきました。女性消防団も支援にあたり、避難所の巡回を続けました。女性にしか言えない悩みや、女性だから言いやすいこと、そういったこと抱えている方は多く、次第に女性消防団に声をかける人は増えていきました。

 

一時は自分も別の場所に避難しようか、そんな思いが頭を巡ったこともありました。しかし消防団の活動を続けているうちに、「自分ができることはやろう!」そう思うようになり、地域に残ることを決めました。

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常葉町女性消防団

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1人暮らしの方を訪問

ー色々な活動をされている三浦さんですが、大切にしていることはありますか?

私はこの町で生まれてこの町で育ってきました。そしてこれからもここで生きると決めたんです。だからこそ、何かやらないとつまらない、そう思っています。

女性消防団の活動は、しっかり形作りを行い、次の世代へつないでいく。

「やきとり みよし」の味は、子どもたちが里帰りをすると必ず食べたいというんです。いつかもし、自分の子どもが「やきとり みよし」をやりたい、そう言ってきたなら、秘伝のタレを伝えようと思います。

 

そうして、昔からあるものを次の世代へつなげていかなければいけないと思います。

さらに、これから若い人の力も加わって、「ここに来るとこういう楽しいものがある」そう他所の人に思ってもらえる地域になってほしいと思います。

 

 

【店舗情報】

やきとり みよし

住所:福島県田村市常葉町常葉字上町80-1

連絡先:0247-77-2091

営業時間:平日 17:30~21:00/金・土 18:00~22:00
※土曜日は予約限定・不定期営業

休日:日曜、祝日

 

 

~編集後記~

【渡邉】おじいちゃんの秘伝のタレの味はやっぱり最高だね!

【山代】ほんとですね!おいしいものがあって、地元の人が集まって語れる場所があるっていいですね!

【渡邉】遠くからもお客さん来てたよね~

【山代】一度食べたらまた食べたくなる味ですもんね。今度は友達も連れていこうっと!

 


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■おしらせ

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